— 耐寒性の目安・防寒資材・藁巻き(こも巻き)の手順を徹底解説
南国ムードと和の重厚感を同時にまとうソテツ(蘇鉄)。
「冬は弱い?」と思われがちですが、適切な防寒と段取りさえ押さえれば、関東内陸〜北陸の一部寒冷地でも越冬は十分に可能です。本記事では、ソテツ 耐寒性の現実的な目安から、今日から使えるソテツ 冬越しの準備、そして伝統的なこも巻きの実践手順まで、現場で使えるノウハウを一気にまとめます。
1|まずは現実を知る:ソテツ 耐寒性の目安
- 葉が痛み始める目安:-3℃前後
- 致命傷になりうる目安:-5℃〜-7℃(長時間の氷点下や乾いた強風、放射冷却が重なるとリスク増)
- 雪害リスク:乾いた粉雪よりも湿った重い雪が厄介。葉が裂けたり、株元に雪が滞留し根腐れを誘発
結論:-3℃を下回る予報が常態化する地域、あるいは放射冷却で朝方の急低温が多い地域は、本格防寒が“必須”。沿岸の温暖地は軽装備+寒波時のみ強化でOK。
2|地域×設置条件で決める「防寒レベル」
レベル0(温暖沿岸・最低気温0〜-2℃程度)
- 基本:マルチング(根元の防寒)+北風避けの簡易風よけ
- 寒波日のみ:防寒不織布を1〜2重
レベル1(関東内陸・瀬戸内など -3〜-5℃)
- 常設:こも巻き or 不織布二重+頂部キャップ/根元は厚めのマルチ
- 寒波日:さらに1重追加、もしくは藁むしろ+不織布の二刀流
レベル2(北陸内陸・東北南部など -6℃以下)
- 常設:こも巻き+二重不織布+頂部防水キャップ
- 補助:**竹で骨組み(合掌式フレーム)**を組み、雪庇回避
- 寒波日:株元に発泡遮熱シート、夜間は不織布追加
重要:日射と通気は“命”。過保護に密閉すると蒸れ・カビ・芯腐れのリスク。
「保温しつつ、ほどよく呼吸」が冬越し成功のキモです。

3|使うもの・使わないもの:防寒資材の選び方
“使える”資材
- 藁(わら)むしろ/菰(こも)・稲藁ロープ:保温・調湿・意匠◎(こも巻きの主役)
- 防寒不織布(30〜60g/㎡):軽くて通気性。二重で保温力UP
- ジュート(麻)・寒冷紗:直射弱めつつ通気を確保
- マルチ材(バークチップ/稲藁/落ち葉):根温維持と泥はね防止
- 竹杭・竹ヒゴ:雪荷重分散のフレーム用
- 園芸テープ/麻紐:固定用(ビニール紐は後年の食い込み注意)
“注意したい”資材
- ビニールシートのベタ掛け:無通気→蒸れ・腐れの温床
- 梱包用ラップ:簡便だが結露→芯腐れを招きやすい
- 黒マルチの過度な使用:日中過熱→夜間急冷で葉焼け・凍結リスク
4|段取り表:ソテツ 冬越しは“始め方と終わり方”が勝負
秋(10〜11月):準備と体力づくり
- 剪定は控えめ:葉数を残す=保温材
- 施肥は控える:遅効き肥料や高窒素は軟弱芽→寒害の原因
- 土づくり:客土・暗渠・排水改善(過湿は致命傷)
初冬(11月下旬〜12月上旬):本設置
- 最低気温が連日0℃前後になったらこも巻き・不織布を常設
- 雪国は骨組み先行→被覆は寒波予報ででもOK
厳冬(1〜2月):点検
- 風でほどけていないか、結露・カビ臭はないかを晴天日中にチェック
- 積雪後はやさしく落雪(たたかない)
早春(3月中旬〜下旬):段階的に脱がす
- いきなり全撤去はNG。午前だけ解放→夕方再装着を数日
- 新芽の動き=中心部が“ぬくい”証拠。最後に頂部キャップを外す

5|写真なくても伝わる!**こも巻き(藁巻き)**の完全手順
目的:風よけ・放射冷却対策・雪荷重分散。そして見た目の風格。
用意:藁むしろ(または菰)、稲藁ロープ(または麻紐)、防寒不織布、竹ヒゴ数本、剪定ばさみ、踏み台
- 葉を束ねる
- 放射状の葉を上向きに軽くすぼめ、麻紐で“三か所”(基部/中腹/先端寄り)ゆるめに結束。締め過ぎると折れる。
- 芯の雨除け
- 頂部(成長点)に不織布を帽子のように当て、麻紐で軽く固定。
- むしろの“裾”を決める
- 地際から10〜15cm上をスタート位置に。通気の逃げを確保。
- らせん状に上へ
- むしろ(または菰)を重ね1/3ずつ被せながら、右上がりの螺旋で上へ。
- 各段の継ぎ目は風下に。
- 結束(胴締め)
- 上・中・下の3段を基本に、藁ロープでほどけない程度に締める。
- 頂部キャップ
- 余ったむしろで笠状にふた。雨雪の侵入を減らしつつ、換気は死守。
- 雪荷重対策
- 葉束の外周に竹ヒゴを数本添えると、“傘骨”のように荷重分散。
- 仕上げ(見栄え)
- ロープの結び目は背面へ。余りは美しく切り揃える。
ポイント:むしろ=断熱布団、藁ロープ=帯。
締めすぎない/隙間をゼロにしないが鉄則。蒸れは大敵。
6|鉢植えのソテツ 冬越しは“動かせる利”を活かす
- 場所:南向きの軒下〜建物際。放射冷却を受けにくい“壁のぬくもり”を借りる
- 床:直置きNG。**スタンド(レンガ・スノコ)**で底冷え回避
- 被覆:鉢を麻袋+不織布で二重コート。鉢側面の保温が効く
- 水やり:乾き気味が正解。午前中に控えめ、夕方の水やりは凍害の元
- 屋内退避:無加温の**玄関・ガレージ(5〜10℃)**が理想。暖房直撃は乾燥とダニ誘発
7|雪国の“最後のひと押し”:骨組み防寒という選択
積雪常習地は、こも巻き+骨組みが安心。
- 合掌式の竹枠を株周りに据え、不織布→むしろの順に外装
- 頂部は三角屋根の要領で水・雪をいなす
- 風の抜け道を風下低所に残すと結露しにくい
8|意外と見落とす“根本”の話:排水・土壌・マルチ
- 排水改善:水が溜まる庭は穴掘り→砂混じり客土→真砂土ブレンドで逃げ道をつくる
- マルチ:バーク・藁・落ち葉を5〜8cm厚。凍結深度を浅くできる
- 防寒シート:株元に発泡系断熱材を寒波の夜だけ差し込む裏技も
9|“よくある失敗”と処方箋
- 密閉し過ぎ問題:春先に中心が黒ずむ→蒸れ。→**昼間だけ解放する“慣らし”**を。
- 巻き上げ過ぎ問題:地際までギッチリ→通気ゼロ→根腐れ。→裾10〜15cmはあける。
- 早すぎ・遅すぎ問題:10月に巻いて3月まで外さない→徒長・カビ。→初冬設置/早春の段階脱衣。
- 水やり夜間問題:夕方の灌水→鉢が瞬間冷凍。→午前中に控えめ。
- 剪定し過ぎ問題:葉を減らす=布団を剥ぐ。→冬前の強剪定はNG。
10|春のリカバリー:葉先が茶色くなったら?
- 軽度:茶変した葉先を三角に整える“見栄え剪定”
- 中度:下葉から輪状に数枚だけ除去。一気に丸裸は避ける
- 重度:芯(成長点)が生きていれば新葉で復活。施肥は4月以降の緩効性でゆっくり
11|費用感の目安(参考)
- 不織布(幅1.5m×10m):1,000〜2,000円
- むしろ・菰(こも):1枚800〜1,500円
- 藁ロープ/麻紐:数百円〜
- 竹杭・竹ヒゴ:数百円〜
- バークチップ(50L):1,000〜1,800円
DIYなら3,000〜6,000円程度で堅実な防寒が可能。
雪国の骨組み併用でも1万円前後が目安(規模による)。

12|Q&A(よくある質問)
Q. こも巻きと不織布、どっちがいい?
A. 見栄えと調湿に優れるのがこも巻き、軽さと取り回しは不織布。“二刀流”が最強です。
Q. いつ外せばいい?
A. 最低気温が3〜5℃を安定して上回る頃。数日に分けて段階的に。
Q. 施肥のタイミングは?
A. 4月中旬〜5月に緩効性を控えめに。冬前は基本NG。
Q. 鉢を室内に入れたら害虫が…
A. 屋内退避は短期・低温で。暖房直撃はハダニ・カイガラムシを誘発。屋外軒下がまず安全。
まとめ:“保温しつつ、息をさせる”——それが勝ちパターン
ソテツ 冬越しの核心は、
- 耐寒性の目安を知る、
- 風・放射冷却・雪荷重を抑える、
- 蒸れさせない、の3点です。
こも巻きは日本の気候に合った理にかなう伝統技術。
藁・不織布・マルチ・骨組みを“重ね着”の発想で賢く使えば、寒冷地でも十分に戦えます。
「うちの環境だと、どのレベル?」
迷ったら、写真(株姿・周辺環境・冬の最低気温)を送ってください。最適な防寒レシピをその場で提案します。